材料科学専攻博士前期課程の木村三士朗さんと世古口太貴さんが、プラスチック成形加工学会第36回年次大会において優秀発表賞を受賞しました
2025年8月21日
2025年6月18日〜19日に東京・タワーホール船堀で開催されたプラスチック成形加工学会第36回年次大会において、本学大学院博士前期課程の木村三士朗さんが「優秀学生プレゼンテーション賞」を、世古口太貴さんが「優秀学生ポスター賞」をそれぞれ受賞しました。
これらの賞は、学生による口頭発表およびポスター発表の中から、特に優秀と認められた発表に贈られるものです。今回の大会では、審査対象となった学生口頭発表8件のうち2件が「優秀学生プレゼンテーション賞」に選出され、木村さんの発表がその一つに選ばれました。また、学生ポスター発表65件の中から選ばれた5件の「優秀学生ポスター賞」のうちの一つに、世古口さんの発表が選出されました。二人には、学会初日夜に開催された懇親会の席上で表彰楯が授与されました。
発表内容(1)
題目
延伸温度がポリエチレンのひずみ硬化挙動に与える影響の解明
発表者
木村三士朗、木田拓充、竹下宏樹、徳満勝久
概要
本研究では、結晶性高分子材料の力学特性のひとつである「ひずみ硬化性」に注目し、その温度依存性を分子レベルで解明することを目的としました。対象として高密度ポリエチレンを用い、一軸延伸中の構造変化を in-situ Raman 分光法により詳細に観察しました。解析の結果、結晶緩和温度以下では、結晶をつなぐタイ鎖が緊張し、その一部に荷重が集中することで、ひずみ硬化が促進されることがわかりました。一方で、結晶緩和温度以上では結晶構造が緩み、分子の滑りやすさが増すことで、応力が分散し、ひずみ硬化性が低下することが明らかとなりました。これらの結果は、結晶性高分子の材料設計を行う上において重要な知見となります。

発表内容(2)
題目
X線散乱法とラマン分光法によるエチレン/スチレン/ブタジエン3元共重合体の繰り返し変形挙動のその場解析
発表者
世古口太貴、竹下宏樹、木田拓充、徳満勝久、会⽥昭⼆郎(株式会社ブリヂストン)
概要
本研究では、新規熱可塑性エラストマーであるエチレン/スチレン/ブタジエン三元共重合体(ESB)の変形挙動を明らかにするため、引張・除荷を繰り返すサイクル試験中の構造変化をSAXS/WAXSおよびラマン分光法によりその場観察しました。1回目の延伸では、結晶ラメラが配向・積層する非可逆的な構造変化が生じ、これが塑性変形の主な要因であると考えられました。一方、除荷時には非晶領域の収縮と結晶構造の部分的回復により弾性変形が確認されました。2回目以降の延伸では構造変化は可逆的となり、非晶領域を中心とした定常的な変形応答が示され、ESBの力学特性が結晶と非晶領域の協働変形により生じていることが明らかとなりました。