知的財産ポリシー

平成20年4月3日
教育研究評議会決定

Ⅰ.基本的な考え方

1.知的財産ポリシーの目的

 公立大学法人滋賀県立大学(以下、「本学」という。)は、滋賀県における学術の中心として、未来を志向した高度な学芸と、悠久の歴史や豊かな自然、風土に培われた文化を深く教授研究するとともに、新しい時代を切り拓く広い視野と豊かな創造力、先進的な知識、技術を有する有為の人材を養成することを目的としている。
 また、開かれた大学として、県民の知的欲求に応える生涯学習の機会の提供や地域環境の保全、学術文化の振興、産業の発展、人間の健康など、滋賀県の持続的発展の原動力として大きく寄与することを使命としている。
 この大学設置の基本理念を踏まえ、中期目標(平成18年4月1日~平成24年3月31日)として、教育と研究、地域・社会貢献について、次の基本的な目標を定め、社会の中での大学のより一層の役割を果たすため取り組んでいる。

○「キャンパスは琵琶湖、テキストは人間」をモットーに、滋賀の豊かな自然の中で「環境と人間」をキーワードとした教育研究を推進する。

○少子高齢化、国際化、情報化の進展により、今後に求められる高等教育の多様化に対応して、学部や大学院を整備充実し、優れた人材を養成する機能を拡充する。

○公立大学として、地域の生涯学習の拠点および地域貢献、産学連携、国際貢献等の社会貢献機能の強化を目指す。

 このような本学の目的と使命を達成するため、本学において生まれる知的財産を、組織として積極的に創造・保護・管理・活用して知的創造サイクルを進めることが必要であり、そのための基本方針を知的財産ポリシーとして、ここに定める。

2.知的財産の範囲

 知的財産(およびそれに係る権利)には、①発明(特許権)、②考案(実用新案権)、③意匠(意匠権)、④植物新品種(育成者権)、⑤半導体集積回路配置の創作(回路配置利用権)、⑥プログラムおよびデータベース、デジタル・コンテンツなどの著作物(著作権)、⑦研究成果有体物(材料、試料、試作品、モデル品、化学物質等)、⑧ノウハウ(秘匿することが可能で、かつ財産的価値のある技術情報)がある。
 上記のうち、本ポリシーの対象となる知的財産は、①、②、③、④とし、これを総称して「発明等」という。これ以外については、今後必要に応じて定めるものとする。
 本ポリシーは①を中心に記述しているが、②、③、④についても、それぞれの知的財産および権利の性質に応じて準用する。

3.ポリシーの対象者

 本学と雇用関係にある教職員に適用する。また本学と雇用関係のない者(学生、本学内で研究に従事している学外研究者など)については、その者と合意の上、知的財産に関わる権利を本学が承継する場合には対象となる。

4.機関帰属

 教員等が職務に関連して本学の管理する資金または施設・設備その他資源を使用して行った研究により生じた発明等は、原則として本学に帰属し、組織として知的財産の有効活用を図る。
 ただし、経済合理性を鑑み、権利化、事業化の見込みがないと判断される場合は、本学が承継せず、または承継後であっても発明者に返還するものとする。

5.利益相反について

 本学の知的財産の創出、保護、管理及び活用や産学連携に関する活動に伴って、外部から得られる経済利益等と教育研究上の責任が対立する「利益相反」の問題が生じることが予想されるが、これらについては今後、考え方を整理するものとする。

Ⅱ .知的財産の取り扱いと権利の帰属・承継

1.発明等の取り扱い

(1)発明届の提出

 教員等は、職務発明を行ったときは、「公立大学法人滋賀県立大学教員の発明等に関する規程」(以下、「発明規程」という。)の定めるところにより、速やかに発明届を学部長等を経由して理事長に提出しなければならない。この場合において、学部長等は、意見書を添えるものとする。

(2)権利承継の判定

 理事長は、提出された発明届けを、発明委員会の審議を経て、本学への承継の可否について決定し、その結果を発明者に通知する。
 職務発明を本学が承継するかどうかは、新規性、有効性および進歩性が認められ、実施可能性等を検討し、判断する。

(3)権利の譲渡

 本学が承継すると決定した発明等については、発明者は譲渡書を学部長等を経由して理事長に提出しなければならない。

(4)出願

 本学は、発明等を承継すると決定したときは、原則、理事長がその責任のもとに出願から権利化までの手続きを進めるとともに、発明者と協力してライセンス等の交渉・契約を行い、その積極的な活用を図り事業化を促す。

(5)権利を継承しないものの取り扱い

 本学は、特許等を受ける権利を継承しないことが適当と認められるときは、当該権利を当該教員等に帰属させることができる。

(6)異議申し立て

 発明者は、権利承継の決定に異議があるときは、理事長に対し、文書により異議を申し立てることができる。

(7)秘守義務

 発明等に関する情報に携わる者はすべて、必要な期間中その秘密を厳守しなければならない。

2.発明者への補償

 本学は、発明等を継承して特許権を取得し、または職務発明に係る特許権を継承したとき、また、知的財産の実施により本学に収入があった場合は、当該発明者に対して、「発明規程」に定める補償金を支払う。

3.出願後の措置

 本学が承継し出願した特許について、出願後3年以内に、当該特許に関する市場性等を再度評価し、発明委員会の審議を経て、理事長が審査請求の当否を判断するものとする。権利化が見送られた発明等は発明者に返還する。
 また、特許取得後も定期的に発明委員会の審議を経て、理事長が権利維持の継続の可否を決定するものとする。維持しないと決定した特許権等は、発明者に返還する。

4.具体的規程

 本項の具体的な運用については、別途定めている「発明規程」による。

Ⅲ.知的財産の創出・保護・管理・活用について

 研究等の成果を知的財産権として権利化し社会において活用・実施することは、本学の社会貢献を促進するだけでなく、社会から得られる新たな知見や研究資金の確保につながり、本学の教育と研究の一層の活性化を図るなど、知的創造サイクルの好循環を生み出す。
 このため、本学は、教員等の知的財産の創出・保護・管理・活用にかかる意識の啓発と教員等の知的財産創出に対して積極的な支援を行う。
 また、創出された知的財産が教員等の永年にわたる知的蓄積、努力及び創意工夫の結晶であることを十分に認識し、その保護、管理、活用に積極的に努めるものとする。

1.知的財産の活用

(1)共同研究および受託研究に伴う知的財産の取り扱い

 契約に基づく共同研究により得られた発明等については、役割に応じて本学と相手企業等の共有とする。また受託研究の場合には、原則、本学に帰属するものとするが、委託企業等の事業戦略を勘案し、特許を受ける権利の譲渡や無償の実施権供与を含め柔軟に対応する。
 なお、契約に基づく共同研究や受託研究の他に、出願する場合には共同研究と同様の扱いとする。

(2)実施または譲渡等

 本学は、発明等を自ら実施する立場にはなく、その保有する知的財産の有効活用を図るため、積極的に民間機関等への技術移転や実施者の発掘を進め、早期の事業化に努める。
 相手企業等の求めにより知的財産の実施及び、譲渡、貸与等の申し出があった場合は、適正な対価により積極的に活用する。

(3)ベンチャービジネスに対する配慮

 教員等が自ら創出した知的財産を使用してベンチャービジネスに活用するときは、上記にかかわらず権利の譲渡等優遇的な措置を図る。

(4)学術目的等への活用

 本学は、保有する知的財産を、学術目的その他公共の福祉のために活用する場合には、何人にも無償で使用させることができる。

2.知的財産の管理

(1)知的財産の管理体制

 本学における知的財産管理の最終責任者は理事長であり、地域貢献・渉外担当理事が実質の管理責任者となり、管理および活用にかかる審議は、発明委員会において行い、組織として知的財産を適切に管理する。
 また、知的財産の創出・保護等の意識啓発や権利の取得・活用促進等の実務は、地域貢献研究推進グループが担当し、知的財産に関する本学の窓口となり、業務を推進する。
 なお、本学は、知的財産を有効かつ適切に活用していくために、弁理士など専門家の支援を得るとともに、外部の機関・団体等との積極的な連携を図る。

(2)知的財産の評価

 本学は、保有する知的財産について、定期的に見直し評価を行い、活用の見込みのない知的財産は放棄や譲渡等の処分を行い、また発明者本人に返還する。

3.知的財産創出へのインセンティブ

 本学は、職務発明等に係る権利の継承にあたり、相当の補償を講じる。また、知的財産を創出した教員等に対し、実施料収入等より適正な利益を還元するとともに、貢献度を評価に反映させる。

4.教育、啓発、広報

 本学は、知的財産についての理解を深め、創出への機運を高めるため、教員等に対する教育啓発活動を積極的に推進する。また、広く社会に対し本学の知的財産活動を紹介する広報活動を展開する。