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ドイツ留学レポート(5)

環境科学部  山元 周吾さん

ドイツ留学レポート(5)

アウクスブルク市内の景色

アウクスブルク市内の景色

★ドイツの春待つ息吹ではなくて吹雪
 3月、アウクスブルクは春の息吹が感じられます、と言いたいところですが本当はとても寒い冬です。まだ雪が舞う季節です。留学してもうすぐ一年になります。ドイツでは4月まで大きなイベントはありませんが、2月には各地でファッシング(カーニバル)という仮装した人たちのパレードがあります。キリスト教会暦では、イースターの40日前は四旬節と呼ばれ、この間は断食期間で肉食を絶ちます。これはイエスが40日間荒野で断食をしたことに由来しています。四旬節前の肉食との別れを惜しみ華やかに騒ぐお祭りがカーニバルであり、四旬節後のイエスが甦ったことを祝うお祭りがイースターです。これが謝肉祭と復活祭と言われる所以です。どちらもキリスト教にとっては大切なイベントなのです。
 この写真は私がお世話になっている部屋から撮ったアウクスブルク市内の景色です。これまでアウクスブルクでの留学生活を話してきましたが、それも今回が最後です。最終回は少し難しい話をしたいと思います。少し難しい話ですがとても大切なことです。

★アジアからの留学生とエラスムス計画
 アウクスブルクでも街を歩いているとアジア人を見ることは珍しくありません。大学では特に中国からの留学生が多く見られます。日本の10倍以上の人口を持つ中国で留学生が多いのは普通だと思われがちですが、桁違いの競争率の中で留学する学生は、留学できるそれ相応の能力を持っています。将来、国際関係の仕事に就こうとする学生には、マルチな語学力は当たり前でそれを踏まえた専門分野の能力が求められています。今では彼らでさえ就職が難しいのに、授業で寝ている学生を想像するとなにかいたたまれない気持ちになります。また、EU加盟国にはエラスムス計画という留学生の流動化を促進する制度があります。1984年以降続いているエラスムス計画による留学生の推移は、現在、ドイツでは鈍化しているものの、アウクスブルク大学については増加傾向にあります。2010年は305名の学生が他国へ留学していて、最も多いスペインへの留学が約3割、あとにフランス、イタリアと続きます。やはりEU全域から見ると加盟国間での留学生交流は今も活発のようです。それに比べ、日本の学生について良い噂はあまり聞きません。先生方にも日本の学生はあまり留学したがらないという印象があるようです。なぜ国によって学生の姿勢にこのような違いがあるのでしょうか。留学生の数や質もその国の情勢を表現している一つの指標に思えてなりません。ドイツに来るまで留学という言葉とは無縁に生きてきたので、その意味を考えたことはありませんでした。人によって留学の目的は違いますが、特に初めての留学によって得られるものはみんな案外似ているのかもしれません。私の場合は、日本色に染まった脳に10万ボルトの電気ショックを受けた感覚です。意味不明ですが、改めて勉強する意欲を頂いたということです。あなたは今なんのために勉強をしていますか。

★ドイツと日本の教育について
 あなたは大学の教育制度について考えたことがありますか。現在、ドイツの大学教育制度はちょうど過渡期にあります。仲の良い友達から学部・大学院制度(以下、BA/MA制度)について不満を聞いたことがあります。やりたい勉強をゆっくりできない、就職が難しい、というものでした。一見よくあるような不満ですが、ドイツの旧制度との摩擦が鮮明に表れています。1999年にボローニャ宣言が採択されて以来、ヨーロッパの大学はBA/MA制度を取り入れるようになりました。ドイツでは2011年を以って全ての大学がBA/MA制度になりました。その目的は、高等教育の連携を容易にし、学術的交流を活発にすること、ヨーロッパ全体の教育基盤の安定と民主化を図り、グローバルな視野を与えることにあります。時流とともに大学に対する社会の要求は変わり、従来の純粋に学問に従事する人の養成機関であった大学も変わる必要がでてきたのです。職業教育として制度を見直すこと、国という枠を飛び越え、国際競争力を高めることが求められているのです。旧制度に自信を持っていたドイツが大学改革をした背景はここにあると思います。急速に広がるグローバル化への対応は、もちろん日本も例外ではありません。これは勝手な思い込みですが、戦後からBA/MA制度を取り入れている日本より中国の方がそれに対する懸命さが窺えます。自分たち学生はそんなグローバル化の渦中にいるのだ、と強く意識して勉強する必要があると考えさせられました。

アウクスブルク大学のキャンパス

アウクスブルク大学のキャンパス

★交換留学を終えて
 2010年はたくさんのイベントがありました。6月はFIFAワールドカップがあり、顔や腕にドイツ国旗を塗り、多くの人がサッカーに熱狂しました。10月はドイツ東西統一20周年にあたり、ドイツ鉄道国内どこでも20ユーロという記念キャンペーンもありました。また、2011年は日独交流150周年となる節目の年でもあります。ミュンヘンやアウクスブルクにある独日協会でも様々なイベントが予定されています。そんなめったにない記念行事を通して、ドイツに住む人々の生活に触れることができたことを大変幸運に思います。
 ドイツでは“Andere Laender, Andere Sitten.”という諺があります。他国にはその地域の習慣があり、それは当然なことである。これは日本の「郷に入れば郷に従え」という諺に似ています。当たり前のことのようですが、実践するともなればとても難しいことです。しかし、その気持ちが少しでもあれば、人との付き合い方もまた変わるのではないでしょうか。留学前に持っていた海外に対する勝手な想像や学生観は、今ではすっかり違うものになりました。私にとってはその変化した気持ちや考え方が「国際化」というひとつの形のような気がします。たった一年間の交換留学でしたが、私のこれからの生き方に大きな影響を与えることになると思います。とにかく、簡単に言うと留学して良かったです。お世話になった方々には本当に感謝しています。

(2011年3月)

滋賀県立大学

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