脳波を用いた作業支援およびリハビリテーション

製造現場やリハビリテーションの現場では、作業者や患者の状態を適切に把握し、個別に最適化された支援を行うことが求められます。 本研究では、脳波を用いて作業中の運動意図や注意状態を客観的に評価し、その情報をもとに作業支援やリハビリテーション訓練を安全かつ効果的に行うシステムの構築を目指しています。 ニューロリハビリテーションの観点から、脳活動の状態に応じたフィードバックや訓練支援を行うことで、適応的な支援技術の実現を目指します。

2025年度 JKA補助事業研究成果報告

本研究は、公益財団法人JKAの2025年度補助事業 「在宅で実現可能なニューロリハビリテーションシステムのためのブレインマシンインタフェースの開発」 として実施しました。

研究の目的

脳卒中等による片麻痺患者のリハビリテーションでは、患者自身の運動意図に応じて訓練を行うことが重要です。 本事業では、在宅環境でも利用可能なニューロリハビリテーションシステムの実現を目指し、脳波に基づく運動意図検出と、空気圧駆動による手指運動補助装置を組み合わせたシステムの開発を行いました。

実施内容

本事業では、脳波から運動イメージを検出し、その検出結果に応じて空気圧アシストグローブを駆動させるニューロリハビリテーションシステムを試作しました。 具体的には、PC上のMATLABからAD/DAボードを介して電空レギュレータへ指令を送り、供給された空気圧によって手指の把持動作を補助する構成としました。

運動意図検出には、ファジィテンプレートマッチング(Fuzzy Template Matching: FTM)を用いました。 FTMでは、脳波特徴量をHighおよびLowのファジィラベルとして扱い、安静状態と運動イメージ状態に対応するテンプレートを作成することで、運動意図の有無を識別します。

また、在宅利用を想定した簡便な計測システムの実現に向けて、脳波計測電極数の削減可能性について検討しました。 運動野および体性感覚野周辺を含む9電極条件を基準として、6電極条件および3電極条件との比較を行い、少数電極化に向けた基礎的な評価を行いました。

得られた成果

本事業により、脳波計測、運動意図検出、空気圧アシストグローブの駆動を組み合わせたニューロリハビリテーションシステムの基礎構成を構築しました。 これにより、使用者の運動意図に応じて手指の把持動作を補助するシステム構成を実現しました。

少数電極化に関する検討では、9電極条件を基準として、6電極条件および3電極条件での識別可能性を比較しました。 その結果、6電極条件では基準条件に近い識別傾向が確認され、在宅利用を想定した電極数削減の可能性が示唆されました。 一方、3電極条件では十分な識別が困難であり、実用化に向けては6電極程度を一つの有力な候補として、被験者数および条件数を増やした検証が必要であることが分かりました。

さらに、リアルタイム処理の実現に向けて、FTMアルゴリズムの高速化を行いました。 従来は、ルール数が多い場合に1秒間の脳波データに対する処理が1秒以内に完了しない場合がありましたが、改良後は処理時間が大幅に短縮されました。 これにより、脳波計測と同時に運動意図を識別し、補助装置をリアルタイムに動作させるための見通しが得られました。

学会発表および受賞

  • Takuma Saga, Norihiko Saga, Toshiyuki Satoh, Nobuyuki Hashimoto, Susumu Okumura, Speedup of Fuzzy-Reason-Based BMI Algorithms for Neurorehabilitation, 13th International Conference on Robot Intelligence Technology and Applications (RITA) 2025, Paper ID.16, December 17-19, 2025, London, UK. Best Poster Award受賞.

今後の展開

今後は、被験者数を増やした検証を行うとともに、患者を対象とした臨床応用に向けて、計測安定性、装着性、操作性、安全性の評価を進めます。 また、脳波のみならず筋電位等の生体信号との併用や、使用者の状態に応じた制御方法の改善を行うことで、より実用性の高い在宅リハビリテーション支援システムへの展開を目指します。

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