平成26年度入学式訓辞

平成26年度入学式学長訓辞

 本日ここに嘉田由紀子滋賀県知事をはじめ、来賓の方々をお迎えして、平成26年度、公立大学法人滋賀県立大学ならびに大学院の入学式を挙行し、学部生626名、大学院生103名を新たに迎えられたことは、本学にとって誠に大きな慶びであります。
 新入生の皆さん、入学おめでとう。
 皆さんは本日から、それぞれの学部や大学院研究科で学ぶことになります。これができるのは、皆さんの努力によるものですが、同時に、ご家族はじめ周囲の方々の深い理解と助力によることを、改めて心せねばなりません。
 本学は、平成7年に開学し、今年で20年目を迎えます。この間の教育実績を踏まえて、現在、教育において二つの取り組みを精力的に進めています。本日入学された皆さんに、それについてお話し致します。

 その二つの取り組みの一つは、地域志向の教育、すなわち地域に向き合った教育の推進です。他の一つは国際通用性のある教育の推進です。
 地域志向の教育は、「地域に根差し、地域に学び、地域に貢献する」本学にふさわしい教育です。皆さんご承知のように、わが国では少子高齢化や、地方の過疎化や、産業構造の変化などが急速に進んでおり、滋賀県内にも、様々な影響が現れています。
 皆さんには、地域の人々からその様子を学び、深く考えて、自分の意見を持っていただきます。その上で、地域の人々とコミニュケーションしながら、一緒に課題解決に取り組むことになります。その実践を通して、社会を前進させる力を鍛えてもらいますが、その力は後に述べる国際交流でも大いに役に立ちます。

 本学は、彦根市を始め近隣5つの市、ならびに滋賀県との連携の下に、文部科学省の支援を得て、新たな地域教育に踏み出しています。これは知の拠点整備事業、英語でCOCプログラムと呼ばれるものです。
 本学に入学された皆さんは、学内での授業において、学外での演習において、さらにはどの学部や研究科でも履修できる「副専攻」において、地域社会との関わりを強めていくことになります。また皆さんの先輩からは、活発な地域活動について聞く機会があると思います。先輩の生の声を聞いて下さい。

 さてもう一つの取り組みである、教育における国際通用性についてお話しします。
 国際的に通用する教育は、教員と学生と大学との協働で作っていくものです。
 まず教員の役割です。
 教員は、授業計画書、シラバスと呼びますが、これを作ります。シラバスには、毎回の授業内容と、身に付ける力と、学期中に到達するレベルと、それを何によって評価するかが示されています。また、どの科目を、どの順に履修するかも書き込んであります。
 本学のシラバスの完成度は高く、どの国の人が見ても、本学の教育の中身がよくわかる作りになっています。これが、教育における国際通用性の第一の要件です。教員は、研修によって授業スキルを向上させ、シラバスに沿って授業し、厳正な成績評価をします。以上が教員の主な役割です。

 次は皆さんの役割です。
 皆さんは勉強して下さい。
 本学の多くの授業では、中間試験と期末試験以外に毎回の授業でも試験があります。宿題もあります。予習しないとついて行けない授業があります。また地域課題への取り組みでは、自分で調べたり、文献を読んだり、プレゼンテーションの用意もしなければなりません。「大学では遊べる」という思い込みは、本学では通用しません。
 しかしながら、日本の大学生の平均となると、他の国に比べて、勉強時間が少ないのは事実です。授業時間を除いて、自分で学習する時間の平均は、日本の学生の70%は1週間で5時間未満、1日平均では、1時間未満です。1週間の自習がゼロ時間という学生も1割います。アメリカの学生はといいますと、ゼロ時間の学生はいません。5時間未満は15%で、60%の学生は11時間から20時間以上勉強します。中国の学生も、これは私が実際に見てきたことですが、毎日夜遅くまで勉強します。自学自習は、変化の激しい世界情勢の中で、生涯にわたって必要となる態度です。これが大学で身に付かないとなると、それは世界の基準から外れていて、国際的には通用しないことになります。

 さて3番目は、大学の役割です。
 大学は、職員と共に、国際交流の舞台作りをします。どんなことかといいますと、先ず、教育レベルが確かな海外の大学と交流協定を結びます。その上で、学生の海外派遣と留学生の受け入れを支援します。本学は、現在、24の大学と協定しており、皆さんの先輩は、昨年、長期留学に39名、短期研修に42名、合わせて81名が在外学習を体験しました。我が国の主な大学は、毎年、入学者数の一割に海外体験をさせようと努力しています。本学でいうと、60余名に相当しますが、本学は81名で、既にそのレベルを超えているのです。今年からは、皆さんが海外学習の主役になって下さい。そのために外国語も鍛えて下さい。
 国際交流の点では、留学と同じように、海外の学生の受け入れもまた大変大事なことです。本学は現在91名の留学生を受け入れていて、大学は、語学教育や、日々の学びや、生活の支援をしています。留学生は、皆さんと一緒の授業に参加します。授業以外でも、日常的に国際交流できることになります。国際交流で大事なことは、物事を深く考え、しっかりした自分の意見を持って、人に接することです。学内での学習に加えて、地域活動の実践がこの力を高めてくれます。

 さて国際的に通用する教育のゴールは、どこにあるのでしょうか。
 グローバル化する今日、厳しい国際的な競争を勝ち抜き、自分や自分が属する組織を発展させる人材が育つことだと、考えられがちです。しかしそれは一面に過ぎません。
 本当のゴールは、多様な文化の違いを理解し、利害と対立を調整し、調和的な国際関係の実現に貢献できる人物が育つことです。また今日では、地球の気候変化に対して、世界の人々と連携して取り組める人も求められています。本学の教育はそのような人が育つことをゴールとしています。

 本日入学された皆さんには、本学が推し進めている地域志向の教育と、国際通用性のある教育を通して、力いっぱい自己の向上に努めてください。
 皆さんの熱意と日々の研鑽を期待して、訓辞といたします。


平成26年4月4日

公立大学法人滋賀県立大学
理事長/学長 大田 啓一