平成27年度滋賀県立大学学位記授与式式辞(2016/03/21)
平成27年度滋賀県立大学学位記授与式式辞
本日ここに、三日月大造滋賀県知事を始め、来賓の方々をお迎えして、平成27年度滋賀県立大学学位記授与式を挙行できますことは、本学にとって誠に大きな慶びであります。
卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また皆さんを支えてこられた保護者とご家族の方々に、心からお祝い申し上げます。
さて卒業生の皆さんはこの先、変化の激しい時代を生きていかねばなりません。大きな変化は皆さんが働く職場や職種において、あるいは地域社会において現れてきますが、少なくとも次の三つの大きな変化を乗り越えていかねばなりません。そのためにしっかりした学び直しが必要になります。
先ず一つは、皆さんの職場に現れる変化です。
今回卒業する590名の内の73%の皆さんは就職が決まっています。残りの人は大学院を経て就職しますが、いずれにしても就職する皆さん全員が経験する変化です。
それは職場における任務の経時変化です。就職して当分の間は、職場への定着が主な任務で、皆さんの専門性が考慮される可能性もあります。しかし数年もすると、期待される役割が変わってきて、自分の仕事を考えるだけでは済まなくなります。職場や事業所を俯瞰して、その上で自分の役割を果たすことが求められるようになります。
さらに時がたつと、職場の管理能力や経営センスが求められるようになります。職場の中堅としての役割が期待されるようになるからです。皆さんの多くはいわゆる理系出身者に属すわけですから、管理や経営の素養が豊かとは言えません。
そのためにタイムリーな学び直しが必要になります。
二番目に出会う変化は、急速な技術革新、特に目覚ましい進歩を遂げている人工知能とロボットによってもたらされる変化です。
オクスフォード大学の研究者は、アメリカの雇用者の47%が、20年以内に人工知能とロボットによって職を奪われると予測しています。わが国でも同様な事態が起こると考えられています。現在ある職種の49%が人間の手から離れるだろうと、野村総合研究所の研究者は言っています。人工知能とロボットで代替できる職業は、特別な知識やスキルが要らない職業です。またデータ分析が中心となる職種です。だとすると人間はその上をいく知識やスキルを身につける必要があります。
また人工知能やロボットによらずとも、グローバル化の進行に伴って、職場が海外に出てしまう場合もあります。場合によっては転職を余儀なくされることもあります。
このような変化を乗り切るために、しっかりした学び直しが必要になります。
三番目に乗り越える大きな変化は。地域社会に現れる変化です。
わが国で急速に進む少子高齢化は、地域社会の財政や教育、医療と福祉のあり方をかえていきます。また既に地方の過疎化をもたらしつつあります。
地域社会の変化をもたらすのは、少子高齢化のような人間が関わる問題だけではありません。自然の変化も大きな原因です。それは皆さんがよく知っている地球温暖化です。
地球温暖化の下で極端化する気象は、地域の衣食住の安定的な供給を破壊します。この先、私達は生命と生活基盤を支えるために、少なくとも食とエネルギーについては、地産地消を進めていかねばなりません。
このような人為と自然の両者に起因する課題を抱える地域を、再び活性化する取り組みは極めて重要な課題です。しかしそれには多くの人の力が要ります。元気なシニア世代にも若い人にも、その取り組みに参加してもらわねば成りません。
しかし取り組みは、経験知に頼るわけにはいきません。科学的な知識と、技術と理論がどうしても必要です。それによって始めて取り組みのレベルと普遍性を確保することができるからです。
この点で、体系性をもった学び直しが必要になります。
以上見てきたような変化を乗り越えるには、タイムリーな学習によって自らをレベルアップする以外に方法はありません。変化は次々にやってきますので、学びも休むわけにはいきません。皆さんには、一生涯学び続ける時代になったのだということを、自覚して頂きたいと思います。
さて、そのような持続的な学びには、熱意と自学自習の態度が不可欠です。本学の卒業生である皆さんは、在学中の授業、フィールド学習、地域活動、さらには海外での学習を通して、自学自習の訓練を十分に積んできました。コミュニケーションの仕方も、人との繋がり方も身につけてきました。
その成果を活かして、息の長い生涯学習を続けて下さい。
生涯学習の成功のためには、もうひとつ必要なものがあります。それはしっかりした再教育プラットフォームです。
本学は教育機能を一層強化して、生涯学習プラットフォームとして皆さんを支援していく所存です。
皆さんの大いなるご活躍とご発展をお祈りして式辞といたします。
平成28年3月21日
滋賀県立大学学長 大田啓一